第4弾重心の最適化を目指したバッテリー搭載位置

ー 530eは後ろのシート下にバッテリーがあるって聞きましたが何でわざわざそんなところに積んでいるんですか？

トランクがあるのに室内にバッテリーを配置しているのは確かに不思議ですよね。でも重量配分を考えるとそれが正しいんですよ。PHEVのバッテリーは非常に重いんです。そのバッテリーを車体の端、例えばトランクに積むと後輪側が極端に重くなってしまいます。つまりBMWが理想とする50:50のバランスが崩れる。だからバッテリーを後席下に配置しているというわけなんです。

ーでも、ガソリンタンクがバッテリーに追いやられてトランクに移動していますよね。重いタンクがトランクにあるとあまり意味がないのでは？

バッテリーとガソリンタンクには大きな違いがあります。それはガソリンタンクは走行に伴ってガソリンが徐々に減り軽くなるのに対して、バッテリーは使用状況に関わらず常に重いままということ。重量の影響を考えれば常に重いバッテリーをクルマのより中心に近い位置に設置するほうがいいわけです。それにガソリンタンクもリアアクスルの直上になるべく低く搭載して重心の最適化を図っています。単純にトランクに押しやっているわけではないんです。

ー重心の最適化がポイントというわけなんですね。単に重量配分を50:50に近づければいいというわけではないのですか。

静止状態で重量配分を単に50:50にするならエンジンをクルマの先端、バッテリーをトランクに搭載すればいいかもしれません。でも、重要なのは重心位置。例えばトランクの端に重量物があるとします。そんな車でコーナリングをすれば後輪側の動き出しに大きな力が必要となり曲がりにくくなるでしょう。また、いったんリアが外側に膨らむと、今度は発生した回転しようとする力がなかなか収束しない。最悪スピンしてしまいます。それでは走りにくいですし危険です。だから運動性や安定性を求めれば重量物はクルマの中心に近い位置にあるほど良いのです。

ーさすが走りにこだわりを持つBMW。PHEVでもそこまでして重心の最適化にこだわっているのですね。

そうなんです。それと、これはBMWを長く見てきた私の個人的な印象かもしれませんが、例えばフロントシートの位置も微妙にクルマのセンターに寄っているように感じます。これも重量物であるドライバーをクルマの中心に寄せ、重心の最適化を図るための設計なんだと私は理解しています。また、座席が中心によっているため視線も自然と道路の中心に行くように感じます。本当にわずかです。機会があればちょっと気にしてみてください。